手痕

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Oくんは高校生の頃遅刻ばかりを繰り返し、ある日先生から罰として一週間二階の廊下の窓拭きをするよう命じられました。 二階の窓だけと言っても端から端まで拭き終わるのに2時間はかかり、Oくんはウンザリしながら毎日暗くなるまで掃除をしていました。 そんなOくんを更に憂鬱にするのはある一つの窓…。 誰の仕業なのか毎日そこだけ手垢がビッシリとついていたのです。 それも内側からではなく足場もない外側から…。 最初は気味悪がっていたOくんでしたが、クラスメイトの誰かの仕業だろうと考えるようになりました。 しかしそう考えても、いざ拭こうとするとそれはこびりついたようになかなか取れず、悩みの種である事には変わりませんでした。 罰から一週間経ち、この日が最後の窓拭きになりました。 Oくんはもはや窓拭き名人の域にまで達し、慣れた手つきで窓を拭いて回るといつもより早くあの例の窓に辿り着きました。 あれ?っと窓の前に立ったOくんは思いました。 そこにはいつもの手垢が無かったのです。 きっと最後の最後でクラスの連中も飽きたんだろうと思いました。 …しかし、手垢はクラスメイトの仕業ではありませんでした。 雑巾を片手に窓に近付くとOくんは全てを知る事になりました。 それは突然でした。 窓の向こう側に逆さ吊りにされた生徒が現れ、何度も窓を叩きながら「助けて!助けて!」と叫んでいたのです。 あまりの出来事に言葉を失い、雑巾を握りしめたまま呆然としているとその生徒はフっと消えてしまいました。 …いえ、消えたというのは正しくありません。吊っていたロープが切れて落ちたのです。 Oくんの後ろの方にある階段の上から、何人かの男子生徒が血相を変えて逃げて行くのが見えました。 窓にはいつもの手垢が…あの逆さ吊りの生徒が必死に助けを求めて付けた手垢だけが遺されていました。 数日後、Oくんは先輩からあの落ちて死んだ生徒が毎日のようにイジめられていた事、三階の窓から逆さ吊りにされて遊ばれていた事を聞きました。 Oくんはもっと早くに気付いていればとやり切れない気持ちでした…。 そして、先輩から最後に奇妙な事を一つ教えてもらいました…。 イジめていた男子生徒の部屋を訪れると… 何故か外から叩いたような手垢が窓にビッシリとついていたそうです。
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