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「蒼海(おうみ)、起きて~」
朝。外とは違う世界なんだと主張するかのようにふさがれていたカーテンは開かれ、太陽の光が容赦なく突き刺さる。頼んでもいないのに声を張り上げる鶏とともに、俺の耳にはもう一つ眠りを遮るものが届いていた。
「二度寝しちゃだめだよ。わたしも一緒に寝ちゃうよっ」
朝パラからこれだけ元気がいいということは、今日はかなり気分がいいんだろうな――なんてことを考えながら、俺の目にかかる、やや重いシャッターをゆっくりと上げていく。
少しぼやける視界にまず入ってきたのは、ドアップされた女の子の顔だった。
「おはよう、蒼海」
ニコリと笑うその少女は俺と同じ向きに頭を向けて、そう言った。いつものように、ベットに寝転がりながら起こしてきたようだ。
「おはよう、リア」
彼女の名を呼んで、ゆっくりと起き上った。
「体のチェックは、済んだ?」
今日の予定は……ああ今日は日曜日か、と頭を整理しつつ、半分無意識でそう尋ねる。一種の習慣というものだ。
「うん。今日もばっちり、超美人だって」
どうやら今日は、相当に気分がいいようだ。ファッション雑誌でモデルがやってそうなポーズをとって、
どうよどうよと得意げになっている。美人であることは認めてやるが、朝の眠たい時にやられても感想を言えない。
「お姉ちゃんはもう出かけたよ。買い物だって。わたしたちも出かけようっ」
寝起きの脳によく響くトーンで、彼女の声が耳に届く。
「まあ、出かけるのはいいけど、どこに?」
「神社行こう、神社。今日はそういう気分~」
気分、か。心の中で、つぶやいた。変わったなあと。
「お昼はどうする? コンビニでいいか?」
「ううん、お弁当作ってあるから、どこかで食べよ。ピクニックみたいにさ」
はいはい、わかったよと、言葉を返す。
「じゃあ着替えるから、玄関で待ってて。すぐ行くから」
「はいは~い」
明るくそう返事をして、彼女は部屋を出て行った。
長い、白い髪を、揺らして。
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