第一章 戦いは、認めなければ始まらない。

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「蒼海(おうみ)、起きて~」  朝。外とは違う世界なんだと主張するかのようにふさがれていたカーテンは開かれ、太陽の光が容赦なく突き刺さる。頼んでもいないのに声を張り上げる鶏とともに、俺の耳にはもう一つ眠りを遮るものが届いていた。 「二度寝しちゃだめだよ。わたしも一緒に寝ちゃうよっ」  朝パラからこれだけ元気がいいということは、今日はかなり気分がいいんだろうな――なんてことを考えながら、俺の目にかかる、やや重いシャッターをゆっくりと上げていく。 少しぼやける視界にまず入ってきたのは、ドアップされた女の子の顔だった。 「おはよう、蒼海」  ニコリと笑うその少女は俺と同じ向きに頭を向けて、そう言った。いつものように、ベットに寝転がりながら起こしてきたようだ。 「おはよう、リア」  彼女の名を呼んで、ゆっくりと起き上った。 「体のチェックは、済んだ?」  今日の予定は……ああ今日は日曜日か、と頭を整理しつつ、半分無意識でそう尋ねる。一種の習慣というものだ。 「うん。今日もばっちり、超美人だって」  どうやら今日は、相当に気分がいいようだ。ファッション雑誌でモデルがやってそうなポーズをとって、 どうよどうよと得意げになっている。美人であることは認めてやるが、朝の眠たい時にやられても感想を言えない。 「お姉ちゃんはもう出かけたよ。買い物だって。わたしたちも出かけようっ」  寝起きの脳によく響くトーンで、彼女の声が耳に届く。 「まあ、出かけるのはいいけど、どこに?」 「神社行こう、神社。今日はそういう気分~」  気分、か。心の中で、つぶやいた。変わったなあと。 「お昼はどうする? コンビニでいいか?」 「ううん、お弁当作ってあるから、どこかで食べよ。ピクニックみたいにさ」  はいはい、わかったよと、言葉を返す。 「じゃあ着替えるから、玄関で待ってて。すぐ行くから」 「はいは~い」  明るくそう返事をして、彼女は部屋を出て行った。 長い、白い髪を、揺らして。
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