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「遅いよ、蒼海っ」
準備を整えてから玄関を出ると、そこには変わらずの笑顔を浮かべるリアの姿があった。
着替えるのにはたいして時間がかからなかったのだが、せっかく外で食べるのだからと思って探したレジャーシートを見つけるのに時間がかかってしまい、結果としてリアを三十分ほど待たせることになってしまったのだ。
「悪い悪い。倉庫の奥を探してたらやっと見つけてさ。遅くなっちまった」
でもこれで外で食べられるぜ、というと、リアはうれしそうに笑った。
「蒼海はこだわるねえ」
空は今、雲という雲を掃除機で吸い取ったかのようにきれいで、見ていて心地がいい。リアも、
「きれいな空だね~」
と同じようなことを言った。
空を見上げたまま歩き出して数歩しないうちに、慌てたようにリアは俺を見て、尋ねた。
「店の鍵、閉めた?」
今日はお姉ちゃんもいないから閉め忘れたら大変だよ、と。何度かそういうミスを自分がやってしまっているからだろう。
「ああ、閉めた。レジャーシート取ってくるついでに、倉庫も閉めておいたから、大丈夫」
ああ、よかった――安堵するリア。
それじゃ行こうか。そういってゆっくりと、歩き始めた。
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