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ふいにリアが、
「あの子、誰だろう」
遠くを見て、そう言った。
指をさすその方向は、まさに俺たちの進行方向で、それはつまりようやく見えてきた神社のほうだった。
やっと休憩かなんて思いつつ、指のさす方向に目を向ける。
「笛、持ってる、あの子」
視界のずいぶん奥に現れたその姿は、正直言ってリアが指をさした意味を考えてしまうくらい普通の――そう、ごく普通の少年だった。
見たところ、七、八歳くらいの男の子だろうか。少年らしい短パンと半袖Tシャツという至って子供らしい服装で、大した違和感など感じられない。特徴という特徴は、あえて言うのなら、片手に持った、鳥の形をした笛だろうか。
本当に、いたって普通の、どこにでもいそうな、少年だった。
とはいっても、こんな朝早くからこんな山道にいるのは、珍しいと言えばそうか、と思い、
「さあ? 神社の子とかじゃないのかな?」
七級生以上なら部活動ということもあり得なくはないが、どう見てもその少年は四、五級生くらいの男の子で、まだ部活は始めらない年齢のはずだ。
「神主さんの息子さん、かな?」
少し走り、リアは大きく手を振った。
「おーい、そこの男の子~!」
「ばか、びっくりするだろうが」
案の定、というか。リアの声が耳に届いたらしいその少年はビクリとして(遠いのでよく見えなかったが、そう見えた気がした)神社のほうへと走って行ってしまった。
「あーあ。あんな大きな声出すからだよ」
呆れたように言うと、
「むー。怪しいよ、あの子。なんか変だもん」
と、リアはあきらめ悪く、口をとがらせた。
「怪しい……って。普通の子に見えたけどなあ」
「ううん、怪しい。絶対なんかある」
なんか面倒臭いモード入ったなあ、なんて思っていると。
「よし、追いかけよう!」
突然リアが、走り出した。それはもう、スピードに特化したアメリカのスポーツカーの如く。
「ちょ、ちょっと待てよ、リアー!」
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