第一章 戦いは、認めなければ始まらない。

6/6
前へ
/8ページ
次へ
 ふいにリアが、 「あの子、誰だろう」 遠くを見て、そう言った。  指をさすその方向は、まさに俺たちの進行方向で、それはつまりようやく見えてきた神社のほうだった。  やっと休憩かなんて思いつつ、指のさす方向に目を向ける。 「笛、持ってる、あの子」  視界のずいぶん奥に現れたその姿は、正直言ってリアが指をさした意味を考えてしまうくらい普通の――そう、ごく普通の少年だった。  見たところ、七、八歳くらいの男の子だろうか。少年らしい短パンと半袖Tシャツという至って子供らしい服装で、大した違和感など感じられない。特徴という特徴は、あえて言うのなら、片手に持った、鳥の形をした笛だろうか。  本当に、いたって普通の、どこにでもいそうな、少年だった。  とはいっても、こんな朝早くからこんな山道にいるのは、珍しいと言えばそうか、と思い、 「さあ? 神社の子とかじゃないのかな?」  七級生以上なら部活動ということもあり得なくはないが、どう見てもその少年は四、五級生くらいの男の子で、まだ部活は始めらない年齢のはずだ。 「神主さんの息子さん、かな?」  少し走り、リアは大きく手を振った。 「おーい、そこの男の子~!」 「ばか、びっくりするだろうが」  案の定、というか。リアの声が耳に届いたらしいその少年はビクリとして(遠いのでよく見えなかったが、そう見えた気がした)神社のほうへと走って行ってしまった。 「あーあ。あんな大きな声出すからだよ」  呆れたように言うと、 「むー。怪しいよ、あの子。なんか変だもん」  と、リアはあきらめ悪く、口をとがらせた。 「怪しい……って。普通の子に見えたけどなあ」 「ううん、怪しい。絶対なんかある」  なんか面倒臭いモード入ったなあ、なんて思っていると。 「よし、追いかけよう!」  突然リアが、走り出した。それはもう、スピードに特化したアメリカのスポーツカーの如く。 「ちょ、ちょっと待てよ、リアー!」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加