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「手加減しないからな」
「お手柔らかに」
そう言うと、ナギも立ち上がり一緒にナギの父で道場の当主の佐々木 楓(かえで)さんの元へ行き、カエデさんの立ち会いで、ナギとの一本勝負が始まった。
道場には、試合用の白い枠線が書かれていて、俺とナギはその枠線の外側で礼をして、枠線内に入った。いわゆる、剣道と同じだ。
決められた位置で止まると、お互いに一度しゃがみこみ、腰に持っていた木刀を抜刀し、互いに向け合うと、立ち上がり、カエデさんの『初め!』という言葉でお互いに動き始めた。
ナギの佐々木流は、相手の流れを自分の流れに合わせることを得意してるから、無闇に飛び込むとナギの思うつぼ。
だが、手を出さなくちゃ勝てないという焦りで、いつもナギには負けていた。
試合に焦りはいらない、落ち着け俺落ち着け俺と、自分に言い聞かせナギの出方を伺う。
すると、今日は先に痺れを切らしたナギから攻めてきた。
木と木がぶつかり合う音が響き渡り、ナギの左右からの攻撃を俺が受け続けていると、鍔迫り合いになった。
「どうしたの、攻めずにまた私に負けるつもり? また勝っちゃうよ? フフッ」
ナギはそう言うと、俺の木刀を押し返し、再び木と木がぶつかり合う音と同時に離れた。
そうだ、何を待っているんだ俺は、すると不意に父さんの言葉が頭を過った。
『後手から攻めてくる相手と立ち会うときに役立つ剣技を教える。俺の得意とする《残刀剣技(ざんとうけんぎ)》まぁ、フェイントみたいなものだ』
……そうだ今まで試したことなかったけど、残刀剣技試してみるか。
俺は一呼吸おき、集中すると木刀を真横に引き、身を屈めて構えた。
ナギも何かを感じとったように、目付きが変わった。
俺は頭で、技のイメージが出来ると、木刀を真横に引いたままナギを倒すため体勢を低くしながら走った。
ナギの前で引いていた木刀を、横に振った……かに見せた。
ナギは俺の刀の軌道に合わせるように、刀を振ったがナギの木刀は空を切った。
ナギはいつも通り流れを読み、合わせたつもりだったが、刀が触れ合う瞬間、俺の振った木刀が消えたのだ。
正確には、消えてはいない。しかし、ナギが気づいたときには、首筋に俺の木刀が突き付けられていた。
一瞬の出来事だった。
「ハ……ハハッ なに今の?」
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