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俺はナギの首筋から木刀を下ろしと、呆気にとられているナギに応えた。
「潤月流残刀剣技(うるうづきりゅうざんとうけんぎ」
「それまで!」
カエデさんの言葉でお互いに木刀を引き、俺の初勝利という形で、この一本勝負は幕をおろした。
それから俺たちは、着替えをすまし、村の中心にある吹き抜けで木造の集会所を目指し、俺とナギは、畑と森に挟まれた小道を歩いていた。
「あぁあ、ついにハルちゃんに負けちゃった。 まぁいつかは負けるって思ってたけどこんなに早く負けちゃうなんて。 で、なんだっけさっきの?」
「ん、さっきのって……あぁ、残刀剣技のこと?」
「残刀剣技……本当に刀が触れ合う瞬間ハルちゃんの木刀が消えたときはビックリしたよ。あれって技名とかあるの?」
「技名かぁ、あるのかもしれないけど俺は知らないな」
「アハハッ なにそれ」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁ』
ナギと話ながら歩いていると、耳に甲高い女性の悲鳴が響いてきた。
「何何今の悲鳴!?」
挙動不審になるナギに対して、俺は冷静に叫び声の方向が、村の神社の方から聞こえてきたことが理解できた。今俺たちが歩いている小道から森に入るための脇道があり、そこの石段を登った先に神社はある。
「ナギ! 神社だ」
「え! 神社?」
俺とナギは神社へ走りだした。神社から聞こえてきた声はシグレの声じゃなかったが、俺はシグレが心配ということもあり無意識にでも走るスピードが上がる。
石段を登りきり、神社が見えると、近くにうずくまった巫女(みこ)がいた。
「大丈夫ですか? どうしたんですか?」
ナギが踞っている巫女に話しかけると震える声で巫女が応えた。
「か……刀……狩り、刀狩……りが……」
「刀狩り!?」
俺はナギの方を見ると、ナギの顔が青ざめていくのがわかった。
「ナギ大丈夫か?」
「……え? う……うん、あっ刀狩り……刀狩りだってハルちゃん危ないよ。お父さん呼びに行こうよ!」
「でもシグレが」
「えっ!? シグレちゃん神社の中にいるの? どうしよぅ」
ナギは動揺しながらも、少し考えるようにしてすぐに応えた。
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