記憶

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刀狩りが身にまとった鎧と、大剣と化した青龍宝剣が、輝きと同時に、元の刀へと姿を戻した。 鎧の下から姿を現した刀狩りは、痩せ細り、ほとんど骨と皮だけの無惨な姿に成り果てていた。 かろうじて息をしているだけで、声すら出す力を失っているようだった。 瀕死(ひんし)の刀狩りのもとへ歩み寄る麻布の者は、刀狩りのそばに落ちている青龍宝剣を拾い上げると、宝剣を持ったまま本堂にいる残りの刀狩りの方へ叫んだ。 「おぃ! 《水雲(もずく)》いるんだろ」 すると、 刀狩りたちの奥からゆっくりとした足取りで、2本の扇子のうち、1本を広げ、口元を隠すようにしている女性が現れた。水色を主体として、様々な柄が描かれてる着物を木崩し、整った顔立ちに長く綺麗になびく髪の毛。まさに美女。 「やっぱりお前だったか」 「お久しぶりです。まさか、あなたが来るなんて想定外でしたわ」 「まだ、宝剣を狙っているのか?」 「まさか、雇われですわ。頼まれたから手伝ってあげただけのこと。このバカどもと一緒にしないでくださいまし、けど、宝剣使っても弱いやつは弱いわね。まぁ、そいつも宝剣なんてお宝を触れたから満足でしょ? お金も貰ったし、私の仕事は終ぉわり、あんたたち頑張ってねん」 モズクは、麻布の者と話を終えると、刀狩りたちに背を向け、手をヒラヒラさせて帰ろうとした。しかし、刀狩りたちが、見逃すはずもなく、回り込まれた。 「はぁ? ふざけんなよ、勝手に話進めてんじゃねぇよ! こちとら大金払って、やっとのことで、探した暗殺のプロである仕込み刀衆のあんた雇ってんだぞ! せめてそいつを倒せよ」 「はぁ? いやよ! あいつ誰だか知ってるの?」 「そんなの知るか! 払った金額分の働きはしてもらうからな」 ため息をつき、その言葉に聞く耳をもたないモズクは、刀狩りたちを見向きもせず、白く綺麗な指先の爪の手入れをし始めた。
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