記憶

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「おい、聞いてんのか! くそアマ」 「口の聞き方に気を付けろよガキ」 モズクの顔色が一変した。手に持つ扇子(せんす)の骨組みから、銀色に光る刃物が出ると、刀狩りに向かい、扇子を降り下ろした。扇子から出ていた刃物が、忍者が使うクナイのように飛び出し、刀狩りたちの頭に突き刺さると、バタバタと6人の刀狩りたちは倒れていった。 「バカなやつら」 パタンッと、扇子を折り畳むと、着物と帯の隙間に扇子をしまうと、本堂の中から外に出てきた。それに続き、本堂の奥から足音と木の軋む音が聞こえてきたのと同時に、刀狩りたちの悲鳴が聞こえてきた。 そして直ぐに本堂の奥から黒い影が出てくると、その者は頭に笠を被って黒い着物に身を包み、まるで僧侶かのような姿に、腰には30cmほどの横笛と60cmほどの縦笛が携えられていた。 「《木天蓼(またたび)》かぁ」 麻布の者は、モズクの横にいる僧侶かのような者を見て囁いた。 「マタタビ、あんた無闇に人斬るのやめなよ、ここ神社なのよ? しかも本堂なのよ? あんたそんな格好しといて、罰当たりに程があるでしょ、きっと今日あんた死ぬわね」 「あいつらは、お前だけどな」 モズクは、さっき扇子で刺し殺した刀狩りたちを見て、確かにという、ぐうの音も出ないような表情をすると、何か開き直ったように表情をもどした。 「まぁ……あれね、人はいつか死ぬのよ、こいつも神社で死ねて幸せよきっと、うん間違いないわ。むしろ、どこで朽ち果てるかわからない命を、わざわざ神社の本堂であの世へ送ってあげたんだから感謝してほしいわ」 「鬼を越えて、悪魔的思考だな。お前それより、あいつどこかで見覚えがあるんだが……」 「あぁあれよ《月下美人(げっかびじん)》のリーダー、あんた勝てる自信ある?」 「ない! しかも青龍宝剣持ってるし、青龍呼ばれたら完全に負ける」 「やっぱり? 強がっては見たんだけど……」 すると、神社に入るための石段をかけ登る、数人の足音が聞こえてきた 。
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