記憶

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日もすっかり昇り、俺が鉄を叩きはじめてから数時間ぐらいが過ぎようとしていた。 このぐらいの時間帯になるといつものように部屋の襖が開けられ俺の母親が顔を覗かせた。 「二人とも朝ごはん出来たから食べましょ!」 これが俺の母親の《閏月 雪吹(いぶき)》である。少し抜けてる天然混じりだが、本当に頼りになる母親なのだ。 男勝りな性格でもあり、父さんも頭が上がらない、160ほどの身長なので、俺とあまり大差がなくなってきたことに最近悩んでいる。 「冷めない内に来るのよ」 そう言って母親は襖を閉めて戻っていった。すると父さんが道具を置き、立ち上がると俺に背を向けながら言った。 「ハル、俺は明日、街に出掛けるからお前は一人で練習しとけ! もう一連の流れは大丈夫そうだからあとは技術を磨いとけよ」 父さんはそう言うと汗を拭うため井戸へ行ってしまった。 「技術かぁ」 俺も道具などを片付けて頭に巻いてあったタオルで汗を軽く拭うと、父親同様に井戸へ向かった。 俺は井戸の冷たい水で汗を流し、居間に入ると、みんな俺を待っていたようでまだご飯に箸はつけていなかった。 「ハル遅い!! お腹減ったんだけど」 和室の畳部屋に4人家族には、少し大きいテーブルが部屋の真ん中に置かれ、それを囲うように座っている。 居間に入るなり、まず俺を怒鳴り付けてきたのが妹の《閏月 時雨(しぐれ)》である。 俺の2つ下の10歳で、村にある青龍神社という宝剣が納められている神社で、巫女の見習いをし、前髪を切り揃え後ろ髪は腰の辺りまで伸ばしている彼女は、母親の男勝りな性格だけ受け継いだ女の子。 いや本当に躊躇なく殴ってくるから、時々女の子なのか疑いたくなるときがある。 しかし、こんな娘を父さんは溺愛してる。まぁ気持ち悪がられて、罵声を浴びせられているのだが 、それでも屈しない父さんは凄いと思う。もしろ快感とさえいい放つ。 『ごめんごめん』と、言いながらテーブルを家族で囲い、俺はシグレと向かい合うように座った。 しかし、俺は疑問が浮かび上がっているのだ。 いつもは先にご飯を食べてシグレは神社へ行ってしまっているのに。俺は疑問を時雨に投げ掛けた。 「お前今日神社行かないのか? いつも先に食べてさっさと行っちゃうのに」 「なんか今日お母さんとお父さんが話があるからって、神社へは話が終わってから行くわ」
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