記憶

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「……話?」 「えぇ、少し大事なことだからシグレにも待っててもらってたの。まぁ食べながら話すわ」 母さんがそういうと『いただきます』という言葉でみんな箸を進め始めた。 ご飯を食べながらいつもと違う雰囲気の食卓を俺もシグレも感じながら母さんと父さんが話し出すのを待った。 すると不意に父さんが母さんの目を見て頷いたと同時に話が始まった。 「2人とも聞いてくれ、ハルにはさっき言ったが、俺は少し家を離れることになる。いつ帰れるかわからないから母さんの言うことしっかり聞くんだぞ。 それとハル、お前の鍛冶師としての土台は完成してる。正直半年でここまで出来るとは思っていなかったぞ。 あとは閏月(うるうづき)家の血で鍛えろ、実際刀鍛冶の技術は教えることが出来ないんだ。 だが、お前なら俺を……いや先代を越えられることが出来るかもしれない」 父さんが何故いきなりこんなことを言うのか俺にはわからなかった。 もう教えることが出来ないような……俺は小さく頷くことしか出来なかった。 父さんは俺が頷いたのを確認すると話を続けた。 「次にシグレお前は本当に出会った頃のイブキと似てるな、まぁ少々俺に照れ屋で暴力的ではあるがな、あと巫女姿のシグレを見たときは萌えたぞ」 「死ねエロオヤジ」 「こらシグレ、人に箸を向けちゃだめよ」 「ゴホンッ まぁ、それはいつもみたいに冗談だと受け取ることにして」 「いい加減に体の芯に刻んどけ!」 真面目な話してるのに何言ってんだよ父さんは。 俺は、このとき不意に母さんの方に振り向くと、親子のやり取りを微笑ましく見てる母さんの目から、一筋の涙が頬を流れ落ちたのを見逃さなかった。 何故泣いてるの? 何が悲しいの? いつもの光景なのに……いや、いつもの光景だからなのか? 俺は父さんと離れるのが辛いのだろうと思っていた。 いつ帰れるかわからないだけで、一生会えないわけではない。 ただ少しの間離れるだけだと、またいつか帰ってくるのだと、俺は思っていた。 食事を終えると、俺は小さい頃から通っている、村の佐々木流剣術道場という、幼馴染みがいる道場へ、いつものように向かった。
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