30人が本棚に入れています
本棚に追加
家から、10分程度の場所にある道場は、舞台かと思わせるような木造の横長で、壁には竹刀や木刀、真剣が並べられ、道場の外には、打ち込みに使う丸太や藁(わら)の束などが、地面に固定されていた。
数時間稽古した俺は、道場の縁側(えんがわ)に腰を下ろし、声を張り上げ、外で練習している数人いる生徒たちの打ち込みを見ていると、道場の娘で幼馴染みの《佐々木 凪(なぎ)》が剣道の袴姿で、すぐ隣に来た。
彼女は俺より2つ上のお姉さんなのだ。
妹のシグレと違って女の子らしく……いやこれが普通なのだ。シグレが異常に違いない。
ナギはポニーテイルで肩にかかる程度の髪の長さに、大きい瞳の可愛い清楚系というわけだ。
そんなナギが俺の横に座り、持っていた木刀を置くと、俺の顔を覗いてきた。
「ハルちゃんどうしたの?」
「……え? 何が」
「ぼーっとしちゃってさ、何か悩み事ならお姉さんが相談に乗っちゃうぞ?」
「……いや……なんでもないよ」
「ハハッ そんなテンションでなんでもないはないでしょ? まぁ、ハルちゃんが言いたくないなら無理には聞かないよ」
「うん……ごめんなナギ」
「もぅ!」
ため息混じりでそう言うと、ナギは広げた手のひらを振りかぶると、俺の背中を勢いよく叩いた。
「痛っ!!」
「シャキッとしなさい男の子でしょ!」
「いってぇぇ、お前なぁ…でもありがとう何か、闘魂注入された感じで元気出たわ。よしっ、一本勝負しようぜ」
俺はナギに励まされると、勢いよく立ち上がり、ナギの置いた木刀を持ち、俺を見上げるナギにそれを向け、勝負を挑んだ。
「フフッ いいわよ、イズモさんの剣技をしっかり覚えたかお姉さんが見てあげる」
俺は道場だけではなく、いや道場では基本や基礎体力を鍛えるために通っているだけであって、俺の本当の師は父さんなのだ。
父さんだけに教わればよかったのだが、仕事もあるし、基本は重要なので道場に通った方がいいとのことで通っている。
従って俺は閏月(うるうづき)流とでもいうのか、ナギとは違った流派なのだ。
最近では父さんも忙しいらしく、俺は道場で父さんから習った剣技を密かに練習していた。
そんな俺の姿を知っているからこそ、ナギは俺にそう言ってきたことが予想出来る。
最初のコメントを投稿しよう!