1人が本棚に入れています
本棚に追加
階段を登りきり、一番上の踊り場に辿り着いた。いつもは不気味にがたがたと喚いているアルミのドアが今日はいやに静かだ。
ドアの向こうの空は珍しく凪いでいた。
構わずいつもの場所に座る。9月の昼下がり、スニーカーの靴底越しに伝わってくる地面の温度はまだ少し熱い。
給水棟の下の、骨組みは錆びところどころ欠けたアイスブルーのベンチ。元は青かったのだろうが、日に焼けてすっかり色が褪せている。和壱が座るとやめてくれ、とでも言っているかのように軋んだ。
ベンチに腰掛けて、袋の中身を広げる。コーヒー牛乳、焼きそばパン、ジャムパン。先ほどまでぷうと頬を膨らませていたレジ袋はぺちゃんこにされ、ランチョンマットの代わりになった。
「ねえ」
その時だった。
天から少女の声が降ってきたのは。
最初のコメントを投稿しよう!