上洛

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「山崎、いるか?」 土方が声をかけると 障子が静かに開き、 一人の男が入ってきた 「なんでしょう」 「千代子、こいつが監察の山崎だ」 千代子は手紙で見た簡単な組織図を 思い出した。 監察方の山崎烝、 確か京に上洛してから入隊した人だ 「よろしくお願いします」 「......」 礼だけを返す山崎。 元々口数が少ないのだろう 「あー、斎藤と、原田と永倉を呼んできてくれ」 「承知しました」 やはり静かに部屋を出ていくと、 すぐに三人は部屋に来た。 仕事の早さに思わず驚いた。 「なんだ?土方さん」 永倉が訊くと、 土方は今回の事を話した。 「こいつにな、稽古をつけてやってほしいんだ」 やはり、土方と同じく、 三人とも意外そうにこちらを見る、 一番に口を開いたのは 原田だった。 「稽古って....剣のっつー事だよな?」 「はい、組長が巡察に出てるとき やることがないので、どうせなら時間を 有効に使おうと....」 「だがなぁ....」 原田は女は男が守るもんだと考えていて 自分も、いつか大切な女を守るために 強くなるんだと話していた。 そういう考えをもつ原田からすれば 女を鍛えるなんて気が進まないのだろう 「俺はいいと思うぞ」 斎藤だった 「自分の身を自分で守れるようになれば 自由な行動ができるだろう」 「俺もいいと思うぜ?なにより俺達が 手一杯になっても、多少剣ができれば、 安全だろうし、戦力にもなるかも知れねぇ、ま、千代子を戦力と考えるのは気が引けるが、いざという時、な」 永倉も千代子に協力的だ、 なにより、剣にたいして 向上心がある者を 永倉は好む。 「原田、まだ納得できねえか?」 土方が確認する 「いや、千代子本人が望んでるんだ、 俺も協力するよ」 どうやら、千代子の意思を尊重してくれるらしい。 「皆さん、ありがとうございます....!!」 千代子は丁寧にお辞儀をする。 顔をあげると優しい笑みがこちらを向いていた。 「んじゃ、以上だな、帰っていいぞ。」 土方が退室を促すと、 しっかりと礼をし、 それぞれ部屋を出た 「それじゃあ、よろしくお願いしますね」 もう一度しっかりお辞儀をして、 千代子は早歩きで 総司の部屋へと向かう 大分待たせてしまった 怒ってるかもしれない
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