上洛

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広間の戸を開けるともう ほとんどの人が集まっていた 二人も、隣り合わせた席に座る。 「土方さん」 総司は土方に話しかける。 「ん......どうした、総司」 「今日はチコも酒を飲むんです」 土方は少し驚くような仕草を見せる。 「へえ、千代子、お前酒が飲めるのか」 土方の声に、近藤も気付き、 「ほう、娘と酒を飲むとはなかなかだな」 なんて、嬉しそうな顔をするから 千代子はもう飲まざるを得なくなった。 「近藤さんも今日は飲みましょう」 近藤は笑顔で頷く、 「そうだな、トシも今日は飲もう!」 だが、土方は眉間にシワを寄せる 「悪ィな、飲みてえのは山々なんだが、 まだ仕事が残ってるんでな、三人で飲んでくれ」 「む....そうか、すまないなあ、いつも トシにばかり仕事を...」 「いや、いいんだ、近藤さんは 新撰組の顔をやっていてくれ」 土方は事務的な仕事をこなしたり、 作戦なども彼が考え、 基本的には影で働いてる。 一方、近藤は表に出ることが多く、 新撰組の顔として目立つ存在だ。 「近藤さーん、みんな揃ったぜ、」 「お、それでは、諸君、頂こう!」 原田の声でいつの間にか席が 埋まっていることに気づいた。 「いただきます」 みんなで声を会わせれば、 それだけで仲間になれた気がした。 「チコ、酌をお願い」 「あ、はい」 杯に酒が注がれると 「ほら、チコ持って」 千代子の手にも酒が渡される。 「あ、えっと.....」 「近藤さーん!」 総司は近藤に酌をし、 三人で乾杯して飲み干す 総司と近藤は何食わぬ顔をしているが 千代子はまだ、二度目の酒だ、 思わず顔を歪める。 「喉がひりひりします....」 一気に飲み干すと、 喉が焼けるようだった 「まだ慣れないのか」 「はい....」 でも何だかんだ千代子も近藤と総司と 酒を飲めて嬉しかった。
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