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京の地形は 山に囲まれた盆地である 夏は暑く、 冬は寒い。 少し過ごしにくい土地であり、 今の季節は初冬。 凍てつく寒さに腕はうまく動かず、 まだこれ以上寒くなるのかと思うと 無事に春を迎えられるか心配になる。 だが、二人はそんな寒さも気にせず 二人の時間を楽しんでいた。 「ほら、ここだよ」 総司が千代子を連れてきたのは 団子屋だった。 千代子もそうだが 総司も小さい頃から 甘味が大好きだった。 昔と変わらないところに 嬉しくなりつつ、 自分も好きな団子に 心踊らせていた。 「お松さん、お団子二人前くださいな」 総司は大分この店と馴染みのようで、 名前も覚えられていた。 「あら、総司はん、今日も来はったん どすか?」 お松さん、と呼ばれた少し背の高い 綺麗な女は、 千代子をちらと目の端で見ると、 妙に納得したような 表情を見せた。 「この子が千代子はんどっしゃろ?」 「えっ、なんで.....」 今お松さんにあってから、 一度も千代子の名は 呼ばれていない
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