169人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば、千代子は暗闇が苦手だったね、懐かしいなあ、」
総司が持ちかけた話題には
嫌な思い出しか浮かばなかった、
「ほら、あの家のすぐそばにあった、夜になると真っ暗になる通りがあったの、覚えている?」
「ええ、覚えています」
小さい頃から
千代子はその道が大嫌いで、
昼でもあまり通りたがらなかった
「遊んだ帰りに日が沈んでしまって
真っ暗なあの道を通ったことが何回かあったなあ」
「ありましたね、いまでも本当によく覚えていますよ、身の毛がよだつあの感覚も、はっきりと」
「本当に怖がっていたからね、いつも気丈なチコが怯えて僕の腕にすがり付くもんだから、あそこを通るのもひとつの楽しみだったんだ」
「組長、ひどいですよー」
たしかに千代子はブルブル震えて
総司の腕にしがみついたのを
はっきりと覚えていた。
「今も苦手なの?暗闇」
「小さいときよりはましですが、やはり
少しこわいです」
千代子は軽く
暗所恐怖症であった。
だから大人になった今でも
少し暗闇が苦手である
最初のコメントを投稿しよう!