おだやかな腐食を繰り返して満ちる

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  その胎を暴いた鉄くずが いつの日か錆びて毒を飼うようになって 下着越しに触れた手をとかしてしまうほど 一体何に怯えていたのか 知りたいのにわからなくて がりがりがりがりくるっていく 病んだ太腿を撫でてくれたのは 人よりもきれいな人の手 本当はすがってはいけなかったのに あなたを食べてしまいたくはないのに 濁った血を薄めたくて それだけのために齧りつく こぼれおちたみずかねを のみほす愚かな王さまはきらい みないふりしらないふり そんな大人にはなりたくない その心臓は汚れた血を吐き出して きっと中から死んでいくから 左の足の親指の爪をなぞる舌の色が 褪せて忘れて消える前に やさしくてやわらかいあの赤が 涙で流れるその前に 醜く拉げたこの脳が とけてなくなってしまいますように どうか  
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