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歩幅の広い橘に合わせるためあたしは早足になる。
たださっきも言ったとおり賑わっている廊下で人より小柄なあたしははぐれそうだ。
…あ、そうだ
ここで逃げても、はぐれたって言えば大丈夫じゃない!?
我ながらナイスアイデア♪
少し前を歩く橘の背中を見て逃げるタイミングを見計らってると。
ふと橘が立ち止まり、あたしを見た。
「奏枝さん」
「え…?」
待って
何であたしと橘の手が繋がれてんの!?
これじゃあ…逃げられないじゃん!
「はぐれたら困るから…ね?」
橘の見せた猫被り王子スマイルに周りにいた数人の女子は倒れたとか。
でも実際の橘は、
「俺から逃げるなんて100年早いんだよ」
あたしの耳元で小さくそう呟いていた。
…バレてるし
王子様は何でもお見通しってか?
ハハッ、それは素晴らしいですねぇ
あたしは橘に聞こえるぐらいの大きなため息をつく。
「…痛っ…!」
「どうかした?奏枝さん」
「…何でも…ない…」
橘が繋がれた手をおもいっきり強く握るから。
ほんとは何でもなくないけど…
こいつ、目が笑ってない(汗)
それからあたしはただ引っ張られるように橘の後ろを歩いていた。
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