王子様の秘密

5/10
前へ
/276ページ
次へ
女の人が妖艶に呟いた名前。 あたしは耳を疑った。 あきら? あきらって…え? 『あきら』の名前で思い浮かべるのはただ1人。 SSの橘 亮。 でも、まさか、ね… 「しつこいんだよ」 ドスッという鈍い音。 軽かったけど男の人の拳は女の人の鳩尾に入り、女の人はその場に倒れた。 あたしは息を飲む。 ここにいちゃ、ダメ… 頭では分かっていても体が動かない。 ふと、男の人の顔がこっちを向いた。 !! え、SSの橘 亮… 確かに彼だった。 校内新聞に載っていた笑顔とはかけ離れた表情だけど。 整った顔は橘 亮そのもの。 ……怖い! 「っおい!!」 あたしは硬直していた体を奮い立たせて逃げた。 何、あの人! もしかして回りで倒れていた人たちも… あたしはこうして教室へと足を急がせていた。 「…瑠璃?」 「え!?」 雪乃ちゃんの声にハッとして我に帰る。 あ、そうか… 「大丈夫?朝から全速力で走ってくるし、急に橘 亮のこと聞いてくるし…」 眉間にシワを寄せて雪乃ちゃんが呟く。 「何あったのか?」
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37830人が本棚に入れています
本棚に追加