【1】声を聞かせて。

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【菜穂side】 「菜穂まだ休憩取らないの?」 「う、うん…。 ごめんね。今日は先に食べちゃって」 「了解!」葵は、手を挙げてラジャーとポーズをキメた。 私も葵に手を振り返した。 ……ちょっと罪悪感。 私は自分の席に着いてマイクを頭に設置した。 私の勤めるコールセンター係は基本的に全員お昼休みの時間帯が違う。 今はお昼の12時。一番人気の時間。 「あれ?松嵜さん。お昼、行かないの?」 仕切りの横から、ちょこんと瀬名さんが顔を出した。 私より10歳も年上のベテラン。この道12年らしい。 「あ…は…い。 もうちょっとだけ仕事してから食べようかと…」 「ふーん。でも、まあ時間通りに食べてよね。 松嵜さんが帰ってこないと休めないのあたしなんだから」 「はい…」 そう嫌みを言うと、瀬名さんは顔を引っ込めた。 瀬名さんが話し始めたのを確認して私もマイクの音量を上げて受け入れOKのスイッチをオンにした。 危なかったー。もうちょっとでも話しが長くなったら間に合わないところだった。
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