【1】声を聞かせて。

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「良いんだよ。だってそう思うのが普通だろうし。 僕もまさかこの年で離婚するなんて夢にも思わなかったからね」 笑いながら自分のことを見ず知らずの人に話すのは容易い。 だけど結構辛いものもあって。 知ってる人だからこそ喋りにくいことだってある。 『いえ……』 「マツザキさんは、何歳?」 『25歳です』 「3歳しか違わないのに、どこで人生踏み間違えたのかなって」 『そんなことないです。 だって―…宮澤さんが離婚なさるのは理由があってだと思います。 私ごとですけど、私の家も私が小さい頃に父が蒸発しました。けどそれもちゃんとした理由があったからのことで、私は父を恨んでません。 ですから離婚が悪いなんていう固定概念は捨てて下さい』 「………ありがとう」 心からそう思った。 マツザキさんは会ったこともない僕に対して精一杯の答えを言ってくれた。
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