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揚々と話す田辺を見てると苛立ってきた。
名前のないこの感情があたしの中をさ迷う。
「ふーん」
ぶっきらぼうに田辺に返事した。
「今から茉莉を迎えに行くんだ」
「西野さん何か部活入ってるの?」
「バドミントン」
「へぇ」
「ちっさいけど、機敏なんだぜ?サーブとかすんごいの」
「ほー」
「誰かさんとは違って俺の話ちゃんと聞いてくれるんだ」
「良かった良かった」
あたしたちは流れで靴箱まで一緒に行くことになった。
田辺は見上げるくらい背が伸びていた。
たった一年でこんなに男子って変わるんだ。
靴箱に着くと、栗色の髪を高い位置で結んだ小さな女子が立っていた。
「茉莉!」
田辺は私に会ったときの声とは全く違った弾んだ声を出した。
茉莉っていう名前にぴったりな可愛い女の子。
あたしもそんな名前が良かった。
だって夕花だよ?
ありえないでしょ。
後ろを振り返った西野さんは、にこっと笑って田辺に手を振った。
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