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「もう直ぐバレンタインだね」
E大付属高校の学生が、大きい声で彼氏らしい男の子と話している。
「何が欲しい?」
男の子は、ちょっと照れながら希望の品を口に出す。
この二人、全く知らない私でも分かるくらいお似合い。
小柄な彼女とは正反対に、彼氏は包み込むような体格。多分、部活、野球とかなんだろうな。
私は、そんな2人の会話を携帯の画面と交互に見る。携帯の中で繰り広げられる現実と目の前の夢物語の温度差。
「はあ…」
次の駅で降りていくカップルを眺めながら、ふと溜息をつく。
「お前、何、溜息ついてるんだよ」
「え、ああ。さっき前に座ってたカップルが羨ましいなって」
「なんだ。そんなことかよ。
由希奈も陣内と仲良くすればいいじゃん」
幼馴染の大輔は、自分のイヤホンをあたしの耳にかけてきた。
イヤホンからは、二年前くらいに流行ったロックバンドの曲が流れていた。
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