【3】まる。さんかく。しかく。

6/15
前へ
/64ページ
次へ
このままいっそ別れてしまうかな。そうしてしまえば、こんなに悩まなくても済むし。 「別れよっか」 「は?」 「ごめん。突然だけど」 春くんは、足を止めて、私の手を掴んできた。 私よりも一回り大きな手。 「なんで?」 心当たりある癖に。 春くんは目を見開いて、私の目を見つめる。 「見たのよ。春くんと千佳ちゃんが抱き合ってるところ」 「え…」 「正直ありえない。 私だけならともかく、大輔まで裏切る気だったの?」 「いや、そんなわけじゃ…」 「じゃあ、なんであんなことしてたのよ!」 ヒステリック気味な声をあげてしまった。幸い、近くに学生はいない。 「……黙ってないで、なんとか言ってよ。というか、弁解もできないんでしょ」 それでも、黙り続けてる春くんを呆然と眺めてる私はなんて滑稽なんだろう。 さっさと答えてくれないと余計虚しくなるだけじゃん。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

528人が本棚に入れています
本棚に追加