【3】まる。さんかく。しかく。

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涙を急いで拭き取って、後ろを振り向いた。 声が誰なのか分かってた。 だから、余計に、泣き顔なんて見せられなかった。 「…ああ、大輔」 ぼーっと私の方を見つめる。 大輔は、気付いてると思う。 私と大輔は、ずっと一緒にいた。 だからなんだって理解出来る。 「お前。陣内に何かされたのか?」 「……どうして、春くんが出てくるのよ」 「さっき陣内が一人で歩いてた。 由希奈、今日、陣内と行くって昨日行ってたのに、おかしいだろ」 ほら、そういうところ。 大輔は鈍感そうで、本当はなんでもお見通し。 「ああ…うん。ちょっと喧嘩しちゃって…それで、今、一人なの」 嘘じゃない。ただもう私と春くんは恋人じゃない。大輔の友達。 「由希奈、顔引きつってる。無理すんなよ。ちゃんと言え」 唐突すぎて、表情を失った。 大輔は分かってる。どうして私が泣いているのかも。どうして春くんが一人で学校に向かっているのかも。 大輔は何も言わずに、私を自分の胸に引き寄せた。 私はそこで思いっきり泣いた。 「お前、俺ぐらいには素直になれよ。好きだったんだよな。陣内ののと。本気で。俺、見てて思ってたよ。由希奈、すんげぇ楽しそうだったもん。あいつと話している時。今までのどの奴らより」 大輔の言ってる事が的を射すぎて、余計切なかった。 それを認めてしまうことになるから。
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