【初 幕】

10/17
前へ
/241ページ
次へ
「えー……は、はじめまして! 自分は、由紀さんと同じクラスの川瀬 梓と申します。この度は、朝早くお邪魔して申し訳ありませんでした。……し、失礼いたします」 ……何言ってんだ、俺。 自己紹介をしている途中から、おじさんの眉間のシワが深くなっていくのに気付いた。 いかついおじさんを横目に、さりげなく帰ろうとしたとき、威厳のあるずっしりとした声が梓を呼びとめた。 「……ちょいと待てや、小僧」 もちろん声の主は、この喫茶店のボス。 「はい……」 どことなく殺意ある声に、恐る恐る答える。 うぅ……。俺がなんか悪い事したか? ……おう、したな。 他人の店入りぃの、オーナーの顔ガン見ぃの、ソッコー帰りぃの、って……失礼極まりないじゃないか! 心の中で言ってて虚しくなった。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

165人が本棚に入れています
本棚に追加