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テントの中で、濡れた髪を揺らしながら、笑顔で手招きする由紀の姿があった。
佳祐はほって置き、由紀のもとへと足を運ぶ梓。
後ろで不満いっぱいに騒ぐ佳祐を取り押さえている友宏には、後で礼を言っておこう。
由紀のもとへたどり着くと、由紀が何か言いたげな表情を浮かべていたが、先に言葉を発したのは梓だった。
「身体、冷えてないか?」
心配そうな声で、由紀の体調を伺う。
「ううん。大丈夫」
「そっか。……よかった」
安心した笑みを浮かべた梓の腕を、ぐいっと引きつける由紀。
されるがままに、身体をとられ、由紀との距離は一瞬で縮まった。
梓の耳元で、由紀が囁いた。
「まだちゃんと言ってなかったよね。
……来てくれて、ありがとう」
由紀の甘い声が、すぐ耳元から流れ込む。
同時に顔が真っ赤になっていくのがわかった。自然に由紀と目を合わせたとき、真っすぐ視線を注ぐ由紀の瞳に、思わず目を逸らしてしまった。
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