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「信じようよ。 おにぎり先生の言葉が嘘でも、いい思い出作りだと思って……みんなで頑張ってみようよ!」
淡々と話す由紀の言葉に、クラスの雰囲気は和んだ。鬼壁も思い掛けぬ出来事に、呆然と突っ立っているだけだった。
すると、爽やかな声が割り込んだ。
「由紀さんの言う通りだね。俺たちが学園祭を楽しむための『目標』ってことでいいんじゃないかな?」
声の主は、久谷 涼[クタニ リョウ]。
軽やかにその言葉を言い放った彼は、佳祐に次ぐルックスを持ち備えた美青年。佳祐を肉食系と言えば、彼は完全な草食系男子。普段はあまり目立たない性格が故に、梓も彼と話す機会は少なかった。
どこか嬉しそうな表情を浮かべていた由紀を見て、梓は下唇を噛んだ。
「まあそうだな! とりあえずみんなで頑張ってみようよ」
現在、我がクラスの理事である友宏が声を上げた。
小学六年の頃から、同じクラスになったことがなかった友宏とは、高三になって久しぶりに顔を合わせ、喜び合ったのを覚えている。
友宏の言葉で、クラスの決意が固まったのがわかった。その途端、鬼壁の太い声が通った。
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