【初 幕】

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「あんちゃんよぉ……お腹すいとるんか?」 「……は、はい!」 だから……頼むから、その怖い顔やめてくれ。 怯える俺をクスクスと笑う由紀の姿が視界に写った。 ……由紀、笑ってないで助けてくれ。 仕方なく視線をおじさんに戻す。 「よし、わかった。……そこ座っとけ」 そう言って、イカツいおじさんはカウンターで何かを作り始めた。 言われるがまま、黙って店の席に座った。 椅子やテーブルからは木の良い香りがした。どこか落ち着く。 不意に、由紀がニコニコしながら俺のテーブルの向かいの席に座ってきた。腰を下ろしたとき、由紀の前髪がフワっと浮き上がった。 愛らしい笑顔がこちらを覗く。 あの顔のおじさんと由紀に、一緒の血が流れているなんて……信じられない。
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