165人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんちゃんよぉ……お腹すいとるんか?」
「……は、はい!」
だから……頼むから、その怖い顔やめてくれ。
怯える俺をクスクスと笑う由紀の姿が視界に写った。
……由紀、笑ってないで助けてくれ。
仕方なく視線をおじさんに戻す。
「よし、わかった。……そこ座っとけ」
そう言って、イカツいおじさんはカウンターで何かを作り始めた。
言われるがまま、黙って店の席に座った。
椅子やテーブルからは木の良い香りがした。どこか落ち着く。
不意に、由紀がニコニコしながら俺のテーブルの向かいの席に座ってきた。腰を下ろしたとき、由紀の前髪がフワっと浮き上がった。
愛らしい笑顔がこちらを覗く。
あの顔のおじさんと由紀に、一緒の血が流れているなんて……信じられない。
最初のコメントを投稿しよう!