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紅風祭に向け、着々と準備を進めていた。紅風祭まで残り二週間ほどだ。
ガラガラー、バシ!
「みんな! お化け屋敷にぴったりの場所。なんとかとれたぜー!」
放課後の騒がしい教室に、豪快にドア開けて飛び入ってきた佳祐が嬉しそうに声をあげた。その声に、クラスメイトの歓声が飛び交う。
「「「おおー!」」」
まだ場所も聞いてないのにこの盛り上がり様。学園祭の力とはすごいものだ。
「で、どこなの?」
黒い布のサイズを計りながら興味津々に問い掛ける夏帆。
「へへっ。旧校舎だ!」
どうだと言うかのように自慢げな顔をして答えた佳祐。その言葉に拍手が沸き起こった。
『最高じゃん!』
『本当。よくあそこ使わせてくれたね』
『まあ準備が大変そうだけど、やり甲斐はあるなー!』
みな興奮しながらはしゃいでいた。ただでさえ騒がしい教室がいっそうに騒がしい。
少しの間その騒がしさが続いたが、数分でおさまった。
クラスの学園祭に向ける雰囲気は悪くない。他のクラスの準備も日に日に本格的になり、各クラスの担任が鬼壁と“賭け”をしているということにも実感が湧いた。
明らかに去年のクオリティーとは格が違う。いや、去年のことはあまり覚えていないが、クラスメイト一人一人の意志が違うのは確実だった。
その雰囲気とは少しかけ離れ、心のどこかに曇りがかった気持ちを抱く梓。由紀とは劇以外で話すことはなかった。
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