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「おう、言ったぞ……」
「うお、まじか?! 頑張ったじゃんか!」
「いや、……言った相手は、初対面のおっさんだ」
「ふふっ! お前、なに言ってんの」
吹き出した佳祐が、笑いをこらえながら問い掛ける。
「いや、マジ。……しかも、めちゃくちゃイカツいおじさん」
既に笑いをこらえるのをやめた佳祐は、爆笑していた。
まあこれは事実だし、今考えてみても自分の行動が信じられない。
「そこぉ! 静かにしやがれ!」
担任の鬼桐[オニギリ]だった。
本名は 鬼壁 桐也[オニカベ トウヤ]で、苗字と名前の頭文字をとって「鬼桐」。生徒はみな「おにぎり」と呼ぶ。
青いジャージ姿に、無精ヒゲを生やし、いかにも『私が熱血の体育教師だ』という雰囲気を放っている。
速やかに席に着く佳祐を、鬼のような目で睨みつけるおにぎり。
今朝のおじさんの顔には、足元にも及ばないな……。
心の中で、おにぎりを嘲笑う。
「おいコラ、川瀬ぇ!」
ヤクザの様な口調で生徒を怒鳴るのはどうかと思う。そのまま、おにぎりが俺を睨みつけていた。
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