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「うーん……。なんでもないかな」
明らかに元気のない声。視線は夏帆を通り越し、遥か彼方に焦点を集めているらしい。
「いや、明らかに何かあるじゃん! どうしたの? ……もー! 私にはなんでも話すって言ったでしょ。ほーら、言ってごらん」
真剣な気持ちで問い掛ける夏帆の言葉に、心から心配してくれているのだとわかった。
夏帆の大きくてはっきりとした瞳から、その視線が真っ直ぐに注がれた。
綺麗な瞳だなぁ……。
思わず見とれてしまった。
「……えへへっ。」
「ん? ……ゆきりん、なに照れてるの?」
不思議そうに見つめる夏帆。
「いやぁー。そんなに見つめられるとー……照れる。なっちゃんの困った顔が可愛いすぎるのー」
「はぁ? せっかく心配してあげてるのにー。も―……。でも、ゆきりんが元気ならいいよ。なんかあったらすぐに言いなよー」
呆れながらもホッとする夏帆の表情からは、優しくて暖かい愛情がそのままに現れていた。
「うん。……ありがとー。私、なっちゃんだーい好き」
幸せそうに話す由紀は、どこか愛らしくて、微笑ましい様子だった。
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