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「そっか……ありがと。私もあずくんが好きだけど、あずくんの“好き”とは違うのかもしれないね……――」
微笑む由紀。
由紀の表情には切なさがあった。喜ばしさも見えたが、そこに真意はあるのだろうか。虚ろに俯くその姿に、梓は迷った。
……何が言いたいんだろう。俺のことは、『友達として』ってことなのか。
ってか俺、フラれた。
静まり帰る教室。
外からはカラスの鳴く声が聞こえる。今の状況で聞くカラスの鳴き声ほど、不快なものはない。
外はもう、夕日が落ちる寸前で、教室を照らす光の明るさはとても弱々しかった。
気まずい雰囲気を振り切るかのように、パタッと学級日誌を閉じる由紀。
「じゃ、私、日誌出してくるから……またね」
そう言って学級日誌を鞄に詰め込み、梓と視線を交わさず教室から出て行った。
一人教室に残された梓。声が出なくて、ただ悲しみが心の中で湧き上がって溢れた。
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