【第二幕】

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日が暮れても、まだ尚、賑わいを見せる商店街を歩く梓。この桜沢町の商店街は、毎日の帰路。だが、いつもよりも長く、虚しく感じられる。 すぐ横を通り抜けた自転車の速さに苛立ちを覚え、右手の中指を立てる。そんなことをしても気が晴れるわけではないことはわかっていたが、何と無く行動を起こしてしまう。 さっきのショックもあってか、今なら何があっても喜べない自信がある。いや確信だ。 ただただ歩く梓の姿からは、リストラされたサラリーマンのようにも見て取れる。心の底から沈まりきっていた。 由紀のことを考えると、胸が締め付けられ、心は曇天の感情へと移り変わる。しかし頭の中ではそれしか考えられない。入り混じった心情の中で、重々しい静寂の時間が流れる。 心身ともに沈まり返り、途方の道を歩いていたとき、前方に見覚えのある姿があった。
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