【第二幕】

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我が修明高校の制服を完璧に着こなすイケメン。横田 佳祐だ。 黒くて長い前髪をいじりながら、街一番のブランド品を取り扱う服屋の前で、ガラス越しに何かを眺めている。 相変わらず買う物が違うなぁ。 言い忘れていたが、佳祐の親父さんは、日本でも有数の大手企業を束ねる社長さんで、横田【YOKOTA】建設グループを三代に渡って繋いでいる。 金も顔も勉強も、全てが完璧なやつは存在しない、と思っていた少三のときの俺は、彼と出会ってその思い込みが呆気なく打ち砕かれた。かなりショックだったし、彼が嫌いだった。 初めは口も聞きたくないぐらい嫌いで、ここまで仲良くなったのも今となっては不思議なくらいだ。 だが案外、小さなことからほんのわずかな絆が生まれ、相手との波長が合うだけで、その絆は強固なものへと変わっていく。 気づいたときには、その人の存在が、自分にとって掛け替えのないものになっているように、人は気づかないうちに、周囲に張り巡らされた人との繋がりの糸を、自らの行動によって手繰りよせる。 「おっ 梓!」 梓に気付いた佳祐は、周囲を気にせず、いつもの明るい声で梓に呼びかけた。
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