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「まだ時間あるし、ここからすぐのとこに、私のおじさんがやってる喫茶店があるんだけどさ。……なんか食べに行かない?」
耳をくすぶるような優しい声で、由紀はそっと問い掛ける。
神様、本当にありがとうございます。俺はいま『生きててよかった』と心から思っています。心のどこかで舞い上がっている自分がいた。
「いや、でも……こんな朝早くから店開いてるかな」
「大丈夫だよ。うちのおじさんものすごく早起きで、さっきお店の準備もしてたからー……多分もう開いてるんじゃないかな――」
『グゥぅーー!!』
また俺の腹が鳴った。しかもさっきよりかなり大きな音をたてた。
静かにしていてくれ! 俺の胃。
「身体は素直なんだね」
うわ、この台詞エロい。
「ん、わりぃ……んじゃ、お言葉に甘えて――」
そんなわけで 俺と由紀は学校から少し離れたところにある喫茶店へ向かうことになった。
玄関を出て、外の時計を見たとき、針は六時四十分を指していた。
外では清々しい鳥の声が聞こえ、放課後気分だった俺の気持ちは朝に戻った。
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