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玄関を出たところで由紀が意外な質問をしてきた。
「あずくんって……彼女とかいるの?」
……へ? 一瞬だけ意識が飛びかけたが、すぐに我に戻し、愛の戦場へ赴く体制を整える。
「い、いないですよ!」
なぜか敬語になった。わりと声も大きくなってしまった。
「へー。そーなんだ。……ってか、そんなに大きい声で言わなくてもきこえるよ」
ニコニコしながら答える由紀の笑顔は、無邪気で太陽のように輝いて見えた。
「んじゃ……由紀は彼氏いる?」
興味なさげに、何気なく聞くふりをした。
本当はかなり気になるが、噂ではいないはずだ。心に一時の緊張が走る。
「いるわけないじゃん! あっでも……」
「でも?」
つい言葉がでてしまった。
焦りが自分の心を乱している。
「でもね。すっごく気になってる人はいるかな――」
ガーン。
何か重たいもので後頭部を叩かれたようなショックが走った。
はぁ。やっぱり好きな人ぐらい居て当然だよな。いやまさか俺とか?
いや、調子に乗るな、俺。
……誰なんだろー。
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