【初 幕】

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玄関を出たところで由紀が意外な質問をしてきた。 「あずくんって……彼女とかいるの?」 ……へ? 一瞬だけ意識が飛びかけたが、すぐに我に戻し、愛の戦場へ赴く体制を整える。 「い、いないですよ!」 なぜか敬語になった。わりと声も大きくなってしまった。 「へー。そーなんだ。……ってか、そんなに大きい声で言わなくてもきこえるよ」 ニコニコしながら答える由紀の笑顔は、無邪気で太陽のように輝いて見えた。 「んじゃ……由紀は彼氏いる?」 興味なさげに、何気なく聞くふりをした。 本当はかなり気になるが、噂ではいないはずだ。心に一時の緊張が走る。 「いるわけないじゃん! あっでも……」 「でも?」 つい言葉がでてしまった。 焦りが自分の心を乱している。 「でもね。すっごく気になってる人はいるかな――」 ガーン。 何か重たいもので後頭部を叩かれたようなショックが走った。 はぁ。やっぱり好きな人ぐらい居て当然だよな。いやまさか俺とか? いや、調子に乗るな、俺。 ……誰なんだろー。
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