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「行ってきま―す!」
と言いながら出発したのは、1番を引いた智のペアだった。先程ため息をついていた女子もどこか楽しそうだった。
男女二人のペアということで、みな期待を膨らませ、自分の番を待つ姿は落ち着きがない。
「はい、では次のペアの方。お気をつけて」
鳥居近くで執事の山田さんが取り仕切っていた。
一つのペアの出発後に、10分間の間隔を空けて次のペアが出発。それぞれ配られた懐中電灯とロケット花火を握りしめ、続々と出発する。
「梓、おまえ何番目?」
「6番目だからまだまだだな。佳祐は?」
「お前の次。まさか最後とはね……ついてないな」
残念そうに呟く。
「でも、ペアは当たりだったよ! 梓もパートナーが北条さんでよかったな。可愛いし、いい子だし――」
「うん、まあね」
あまり乗り気ではない梓に、ポンと肩を叩く佳祐。
向こうで星二と話す由紀の姿が見えた。楽しそうに話す由紀を見たとき、心が曇っていく気がした。
はぁ……。まあいっか。北条さんも可愛いし、優しかったし。今日は運が良いんだか、悪いんだかわかんね―な。いや、良い方かな。
そう思いながら見上げた夜空には、いくつも星が惜しみ無く輝いていた。満天の空に流れた一筋の光。
流れ星を見たのは、いつ以来だろう……――
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