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続けて梓が話しだした。
「星二の身体は冷え切ってる。これ以上冷えたら危ないよ。……本当は、全部俺が悪い。俺が肝試ししようなんて言ったから……」
「落ち着けよ。賛成した俺たちにだって責任はある。今、お前が一人で抱え込むことじゃない」
佳祐がなだめようと話すが、言葉は全く頭に入っていないのがわかった。
「もうこの雨じゃロケット花火なんか使えない。助けを呼んでも雨音で掻き消される。はやく見つけなきゃ……――」
梓は近くにあった懐中電灯とタオルを握りしめ、全力で走りだした。
「梓ー!」
佳祐が呼びかけたが、そのまま駆け出していく。
執事たちが危険を察知して食い止めようとするが、電光石火の如く擦りかわしていく。
雨は一向に降り続き、留まることを知らない。
無心で駆けていた。
気付いたときには、天守山の暗闇に包まれていた。
こんなに暗いのかよ。
生い茂る木々により、雨は弱まるが、木々の少ない所では激しい雨が打ち付ける。
どこにいるんだよ……。
由紀……。
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