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カラーンという金属音が8つ響いた。20時を知らせる鐘の音だ。
いつもであれば、この音は『朝まで外出してはいけない』という意味も兼ねているのだが、行事がある日にはその逆。『外出しろ』という意味になる。いや、正確にいうならば、『行事を開始する』という意味だ。
そして今日はその行事がある日だ。
今日は10月31日。つまり、その行事というのはハロウィンの事だ。
鐘が鳴り終わるとともに、いくつかの家から小さい人影が大きい入れ物らしき物を持ち、嬉しそうな声ではしゃぎながらでていった。
おそらく、彼らは村の家を周り、『トリックオアトリート』と言ってお菓子を貰いにいくのだろう。
ちなみに、トリックオアトリートの意味は、『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』という意味だ。
「行ってきまーす!!」
「…い、行ってきます」
とある家から、わくわくしている男の子の声と、おどおどしている女の子の声がし、続いてバンッ!!というドアを勢いよく開ける音がし、タタタッという走る音がした。
彼らの名前は、須藤恭弥と須藤涼子。兄妹で、年は11と8。
2人はしばらく―――といっても、数十秒ほど走り続け、とある家の前で止まった。と同時に、恭弥はその家に向かって呼び掛けた。
「健ー!!」
「今行くー!!」
返事が聞こえ、10秒程で健なる人物が家から出てきた。
「おまたせ~」
本名は霧ヶ峰健。年は11で、恭弥とは大のつく親友だ。
「じゃ、早速行こうぜ!!」
「おー!!」
「…お、おー」
どうやら彼らは一緒にハロウィンを楽しむつもりのようだ。
それにしても男2人の入れ物がでかい。いや、でかすぎる。
涼子は、縦横10cm、高さが5cm程で、普通の男の子でも縦横20cm、高さ10cm程(それでも十分大きいが)の入れ物に対し、恭弥と健は、縦横30cm、高さ50cmのもはやバケツサイズの入れ物だ。どんだけ食欲旺盛なのやら…。
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