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しかし、村の大人達はこの2人が食欲旺盛なのは知っている。
ある人はカステラまるまる1つを。またある人はキャンディを十数本を、極めつけには、入れ物スポっと入ってしまう程の切っていないケーキを1つ入れるような人までいた。
カラーンコローンと、9時の鐘がなった。
3人の入れ物は、十数件の家からのお菓子によって満杯にちかい程入っていた。
食欲旺盛な男2人は満足したのであろう。お互いの入れ物を見、そしてお互いの顔を見て、同時に満面の笑みを浮かべ、コクリと頷き
「「今年も大収穫だったな!!」」
と言い、片腕を上げて『また明日』と言おうとしたのであろうが、その前におどおどした涼子の声が聞こえた。
「…ね、ねぇ。あんな所に家なんて…あったっけ?」
2人は腕を下げ、涼子の指がさす方向へと視線を向ける。
40m程離れた所に、古びた木製の小さな家があり、明かりがついていた。
2人は視線を戻してお互いの顔を見、同時に首を傾げた。
「あんな所に家なんてあったっけ?」
「さあ、なかったような気がするけどな」
30件程しかない村なので、どの家に誰が住んでるかなどは覚えいる3人であったが、くだんの家については3人とも知らないようだ。
3人はしばらく沈黙した後、恭弥がさも当然のようにこう提案した。
「思い出しがてらお菓子貰いに行こうぜ」
この発言に、賛成1反対1。
「そうだな。行ってみようぜ!!」
と健。
「…や、なんか嫌な感じがするよう………」
と涼子。
「大丈夫だって。この村に悪い人なんていないし」
「そうそう。それに、忘れてるなんて相手に失礼じゃないか」
だが、涼子は兄と健に説得され、しぶしぶながら3人でくだんの家に行く事にした。
「「「トリックオアトリート!!」」」
3人はドアをノックした後、一糸乱れず叫んだ。
すると、数秒してドアが開いた。
………だが、そこには誰もいない。
けれども、彼らはこういうようなカラクリ仕掛けを知っているため、若干驚いた程度で正気を取り戻した。
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