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「いやぁ、銀河鉄道の夜、素晴らしかったよ!」
俺はそう言ったが、これは嘘である。
いや、厳密に言えば決して嘘では無いのだが…。
というのも、俺は彼女から借りた本をろくすっぽ読んでいなかった。
本に染み込んだ彼女の匂いを、一晩中嗅いでいただけ。だから内容なんてちっとも分かっていない。
…分かっていないが!素晴らしかったのは事実であるのだ。
放課後の雰囲気というのはなんだかとても穏やかで、今にも飛び出しそうなくらいに高鳴る心臓の鼓動も心地良い。
廊下の壁にたたずむ柱の影で、ひそかにこんなやりとりをする俺たちを気に止める者は誰一人としていないし、廊下を歩く生徒たちの話し声や足音が俺たちの距離を良い具合にごまかしてくれている。
もっと静かで狭い空間に二人きりでいたのなら、俺はまともに声を出す事ができないだろう。
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