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「また何か貸してくれよな!」
俺がそう言うと、彼女は一度だけ俺の目を見て、微笑んだ。
彼女は本が大好きなのだ。
普段はものおとなしい彼女なのだが、本の事になると目を輝かせて楽しそうに話す。
そんな彼女はたまらなく可愛かった。
彼女のそんな姿を見たくて、俺は好きでも無い本を彼女から借りるのだ。
ほんの二、三日前にワックスを塗ったばかりの床に、滑るようにして夕日が映えている。
俺たちはその床に目線を落とし、しばし無言。直接顔を上げて夕日を見るのはまぶしすぎて、今の俺たちにはその方が調度良いのだ。
恥ずかしくて顔を上げられないわけじゃない。そういう事にしておく。
互いに目を合わさず、だけど同じ時間を共有している意識はあって、それが妙に嬉しい。
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