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「さぁて、立ち止まってる暇があったら……
とっとと魔王を潰して勝利の美酒と洒落こもうじゃあねぇか!」
赤髪の彼がその場で軽く足踏みをして自身を奮い立たせると、クスリと鼻で笑いながら歩みを進め、彼は自信に充ち満ちた強い眼差しを輝かせた
そして、それに呼応する様に金髪の彼が口を開く
「俺ぁ、酒より飯が喰いてぇな
最近はまともな料理なんて口にしてねぇし
んで、良い宿のベッドでぐっすり……
いやぁ、最高だね!」
彼もまた、爽やかな笑顔を浮かべて欲望を口から垂れ流すと私の肩を掴んだ
「んじゃまぁ、そんな訳で
大いに期待してるぜ、お嬢ちゃん」
彼はその透き通った爽やかな笑顔を私に向け、赤髪の彼の後を追う
その姿はなんとも満ち足りたものだろうか
今までに見てきた彼らのボロボロで疲れ切った様相は何処へやら、解放感とも言えるそれを纏った彼らの足取りは軽い
だが、私はどうだ、迷っている訳ではないが、どことなく脚が重い
「私は……」
そう、この扉を開けたら
私は今まで以上の化け物になるやも知れない
そうすれば、人の波に渦巻く地に赴く事も、余計な繋がりを持つ事も無く、無限の自由を手に入れられるだろう
それは今まで被って来た『人』としてのガワを捨てる事に他ならない
そう、考えれば……
「もう、何もいらないけどね」
私は、自然と口元が緩む
例え、化け物と蔑まれ、英雄でも、ましてや人とすら呼ばれぬ様になったとしても
それを私は望んで受け入れるだろう
化け物となった私は果たしてどうなるのだろうか
力の限り他者を蹂躙し尽くす獣になるのか
それとも、ただ静かに獲物を待ち伏せる狩人になるのか
どれも、今の私にとっては魅力的だ
そうここは、私の『運命』を定める聖地
私が化け物として、人を捨てる事の出来る千載一遇のチャンスを握る事の出来る場所なのだ
「行くぞてめぇら!
腹ァ括れよッ!」
「おうよ!」
「えぇ、やりましょう」
赤髪の彼が私達の顔を見回し、私達もそれに答える
「それじゃあ、行くぜ?
どぉぉぉりゃァァァァァ!」
彼は大きく声をあげて大扉を大胆にも渾身の蹴りを放った
大扉はその衝撃で轟音をあげ、ゆっくりとその口を開ける
私達は意気揚々とその大口へ脚を伸ばした
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