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「また先走る!
アル、レオンの援護を!
カウント、20は保たせて!」
私はレオンの攻撃に合わせる様に魔法発動の準備の為、その場からやや後ろへ跳びながら、金髪の彼、アルこと、アルヴィオンに私の防衛とレオンのサポートをする様に指示する
「あいよ!
ったく、ウチのリーダーって奴ぁ……
いつでも茹でダコみたいで困るよなぁ!」
彼は呆れ顔を浮かべ、その額から脂汗を滲ませて愚痴を溢しながら、槍を構えてレオンに向かって走り出した
その時だ
「……ふふっ」
金髪の少女はその場でフッと不敵に笑みを浮かべる
それと同時にトンッ、と言う何かを叩いた様な小さな音がレオンが居る方向から聞こえた
「はい!
これで一回死亡!
ですね!」
私達はその光景に稲妻が走った様に戦慄する
彼女は目にも止まらぬ速さでレオンの横に立ち、その背に背負っていた筈の細身の剣を鞘ごと手に取り、それを彼の首筋に軽く当てたのだ
それも、満面の笑みで
「ッ!?」
斧の刃は虚しくもその重い身体を示す様に勢い良く地面に突き刺さった
彼女は一頻り楽しげな笑顔のまま、鞘でレオンの首筋を一定のリズムに合わせて数回叩くと、彼のこめかみを通って滴る汗を頬の辺りで受け止める様に舐め取る
驚く事は更に続き──
彼女は瞬時に再び先程の場所に戻り石畳に突き刺さった状態の斧頭、少女と比べてもその腰ほどまである様な大きく重厚なそれを片手で軽々引き抜くと、そのまま横に放ったのだ
そして、彼女は涼しげな笑顔で何事も無かったかの様に笑顔のまま剣を肩に掛け直す
「うーん
やっぱりと言うか何と言うか
予想以上に鈍~い反応ですねぇ」
彼女は首を傾げながら少々苦笑いを浮かべて呟いた
対して、彼女のあまりにも余裕綽々な態度に全身を震わせたレオンは、柄を振り被り、斧頭を柄の元へ戻して床に向かって斧を叩き付け、再び構えの姿勢を取る
すると、彼女は何かを思い出した様に私達に穏やかな表情を向けた
「あぁ、そう
申し遅れていました
私はレイチェル
レイチェル・フランソワーズ・ド・シュヴァリエと申しまして
この城の主である魔王様
ヴァレンシア・クーネロイス様から騎士の称号を頂いた側近であり
その一人娘にございます」
彼女は行儀良く深々と頭を下げ、屈託の無い爽やかな笑顔でそう言う
余裕綽々、そんな様子の彼女には一滴の汗もなく、我々を嘲笑うかの様にもう一度
可愛らしくスカートの端を持ち上げた
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