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「ふふっ………
ふふふっ……」
彼女は身体を震わせながら、恐ろしく不気味な笑顔を絶やさず、静かに笑い声を漏らす
「これ程に出来る方の相手は久しぶりです……」
彼女がそう言いながら、私の方へゆらりと視線を突き刺し、今度はゆっくりと目を瞑って大きく息を吸い込む
すると驚くべき事に、身体中に刺さっていた氷の針を自らの血液ごと抜き出した
すると、それが彼女の周りに散らばって一瞬にして蒸発していったのだ
「本当に化け物だってのか……?」
アルが声を引き吊らせて呟く
それに対して、彼女の方はと言うと全身に着いた氷を、手で埃でも払い落とす様に丁寧に服を整えた
彼女の身体中から一通り針が抜けた所で、彼女やその衣服からも湯気が消える
所々破けて穴が空いていたり、血の付いた後があるが、衣服はすっかり乾いた様にふわりとしていた
「そうですね……
まぁ、多少は複雑な事情がありますけれど
これでも一応は吸血鬼ですからねぇ」
そう語っている間に、彼女の傷はみるみる内に全て癒えてしまう
衣服はそのまま、そこに空いた穴の隙間から傷一つ無い綺麗な肌が露になっていた
「なんつう回復力だ……
全身凍り付いてたんじゃ無いのか!?」
レオンが声を挙げ、斧を下段に構え直し、呼吸を調える
「不慣れとは言え、私にも障壁はありましたから……
見事に貫かれてあの様でしたが……
あの程度の冷気ならば、まだ私の回復力の方が数段上ですし
当然の結果でしょう
尤も、それ以上に私はお気に入りの服が破れたのがショックなんですけど」
彼女の言葉は余裕そのもの、人間である私には考えられない様な異様さを如実に表していた
だがその程度で怯む私ではない、魔法使いは常にクールであるべきもの、一人であろうと徒党を組んでいようと、その役割に変わりはない
「嘗められたものね……」
とは言うが、先程の魔法で効かないとなると、こちらに余裕が無くなってくるのは事実だ
それならば、出来得る限りの火力を連続で叩き込むだけ……
その為には再び時間稼ぎを前の二人にして貰うのがベストであろう
「二人とも、カウント15ッ!
今度はもっと盛大に壊してあげるから、覚悟してもらうわ!」
私は前衛の二人に合図を送り、再び魔法の詠唱に入った
「まぁ、出来るならどうぞ?
せっかくですし、お待ちしてあげましょう!」
彼女はトントンと左足で床を叩き、可愛らしく両手を腰に当て目を細めた
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