The first contact

18/33
前へ
/398ページ
次へ
「この女が…… 魔王だと……?」 彼女を見るなり、レオンが先程蹴られた腹部を押さえながら咳き込み、そう呟く その表情は痛みに歪み、痛みからか何度かむせていた 同時に、アルも槍を構え直し、彼女をじっと見詰めている 「えぇ、紛れもなく」 彼女は玉座の前に立ち、我々を前にしても妖艶に含みを持たせた笑みを絶やさない そして、振り返る事無く自らの後で佇む金髪の少女に話し掛ける 「レイチェル、下がって構わないわ あぁ、そうね…… ついでに紅茶でも淹れておいてくれるかしら? きっとこれが終わったら喉が乾くから」 「はっ、承知致しました」 彼女の令に、少女は軽く頭を下げると再び自らの影に消える その間際、少女は再び私に鋭く悔しげな視線を送っていたが 「ふぅん…… 見た所、ここに来るだけの事はありそうね 情報通りね、ウチの斥候達も優秀優秀…… 良い仕事してくれるわ」 彼女は私達を見渡し、変わらぬ微笑みを浮かべている 「これなら、久々の運動にも丁度良さそうかしら? まぁ、あんまり私が動く事も無いでしょうけど」 だが、私達は共通してある疑問を感じていた 「さて、まずは何方から来るのかしら? ボーッと突っ立ってるだけだと、張り合いも無いでしょう?」 彼女が、本当に魔王なのかどうかである 「そっちのお嬢さんは良いとして── 前の二人はしっかりやる気みたいだし 準備が出来たら教えて頂戴な?」 その要因は、彼女から一切覇気が感じられないからだ 「はっ…… ははははは…… 何の冗談だ? 嘗めてンじゃねぇぞ、糞アマ……」 「威勢も良し でも、それだけならとっととお帰り願いたいのだけれど ほら、撃ち込んで来なさいな、勇者さん 私の首はここよ?」 乾いた笑いと共に再び声を上げるレオン、怪しげな笑顔を浮かべて喉元を指差しながら挑発する魔王 こちらから彼の顔を確認する事は出来なかったが、恐らく、彼の性格からその顔は鬼の形相をしているだろう 声色も怒りに満ちている 「ふふふ…… 私から行くのは流儀じゃないの どうぞ、貴方達から掛かっておいでなさいな ちゃんと受け止めてあげるから」 彼女は相変わらずの笑顔で、怒る彼を挑発し続ける それを見ていたアルも徐々に焦りを感じ始めていたのだが、ついに彼は自らの斧を力任せに地面に突き刺し、クスクスと笑っている彼女へ向けて吼えた 「さっきっからギャアギャアと…… 俺の神経を逆撫でしやがって……!」
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加