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騒動の翌日、国家の中枢である王宮、その最高階の一室に二人の男、そして二十三もの魔力体が存在していた。
「これで全員だな、では緊急の隊長会議を行う」
唯一椅子に座った男が告げた。小太りで偉そうなマントを羽織(はお)り、過度に装飾された杖を持つ男こそ、この国家の王、『ジャン・リンカーン』その人である。
『ちょっと待てジジイ、カルロはどうした?』
反論した魔力体も、過度の装飾を施された服を身に付けるが、激しく着崩れされている。彼はジャンの一人息子兼φ隊隊長『J・R・ジュニア』だ。最も彼はその名を嫌い、自ら『ロペスピエール』を名乗っているが……
「カルロは、ゲボォッ!……ハァ……ハァ……失礼、カルロは今施設で治療中です」
説明中、突然咳込んだ男は全身をスローブで包み、どんな姿か知っている人物はいない。
彼は鎖国前に流れ着いた所謂よそ者であるが、ジャンから絶大な信頼を置かれ、今の地位は王族補佐官、早い話がNo.2だ。本名かは不明だが『シュピーネ』と名乗っている。
『ハッハァ!ざまぁねぇなα隊も!』
ロペスピエールは哄笑し、罵倒する。そして、自分ならそんなヘマしないと声高に叫んだ。
『情報に不備があったようですが、シュピーネ殿』
別の魔力体がロペスピエールを無視し、シュピーネに疑問をぶつける。
『そもそも、このルートの安全性を主張したのはシュピーネ殿だ』
彼はそもそもシュピーネに懐疑的な所を持っていたが、今までは破格の功績故に許容していた。だが、今回の失態は数としての一回以上に重いものだ。
「たった一回の、ガハッ……失態を気に……しないで下さい」
『貴方は解放の杖の力を知らないからそんな事が言える!』
彼が語気を強めるが、
「すみませんが……私はここで退場させて……くれませんか?」
シュピーネは王に退場を進言した。本来なら許されざる暴挙だが、
「許すからさっさとソレを治してこい」
許可をとり、彼は壁に手を付きながら退場してゆく。
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