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魔人大戦の被害は狂っていた。戦場の中心となった地点から半径50kmは進入不能の最後の戦場と化し、また、中心から見て半径1000kmは草一本生えない不毛の土地と化している。
《最後の戦場》周辺は超高濃度の魔鉱石に変化しており、その剥き出しの魔力を当てられ、あらゆる目的で来た生物全てを魔力の塊か、魔獣にしている。
通常魔鉱石は大した魔力を持たず、また魔力による副作用はそれこそ一度に億単位の魔鉱石を使いでもしない限り起こらない。デメリットが無視出来るからこそ、軍事から日常まで幅広く普及している。
また、自殺事変の戦死者の内3分の1はこの戦いの余波である。特に450km以内に居た生物は全て死滅してしまった。その対象は人間はもちろんの事、鳥類、爬虫類、哺乳類、魚類、霊長類、昆虫、微生物に至るまで全てである。
1000km以上ある国家でも、魔術装甲で固めた壁を蒸発させられていた。
魔術装甲は護りに特化させれば、対国兵器すら寄せ付けない、文字通りの鉄壁と化す、軍事転用された有名な技術である。
何より恐ろしいのは、この被害がたった二十数人が争い起きた事態である事だろう。その誰もが、祖国では英雄と讃えられた存在ではあるが、これ程の数が揃ったのはこれが最初で最後である。
自殺事変の原因は今や誰も覚えていない。
自殺事変と言う呼び名自体、終戦後自然と浸透した言葉である。
多くの都市国家が疑心暗鬼に陥り、同盟国を植民地にし、別の同盟国の植民地にされる。大量虐殺者の英雄を祭り上げ、中立国を蹂躙する。その果てに魔人大戦である。
ある意味、この結末は自業自得なのかも知れない。
そういう意味では、自殺事変と言う名は確かに的を得ている。
この事変の後も、世界は事変の爪痕をその有無に関わらず凝視する事になる。
インフラは完全に破壊されており、国を失った多くの人間が盗賊・テロリスト化、産まれてくる赤子は空気中の濃すぎる魔力で異常が発生する。
それから二十年
そんな世界の中の小さな都市国家から話は始まる。
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